大原・八瀬

【京都・大原】庭園を目当てに訪れたい、里山の寺院

  • 文化

2023.01.30

春夏秋冬、どの季節に訪れても美しい山と田園の景色が広がる里山・大原。比叡山延暦寺のお膝元であり、多くの寺院が点在していますが、そのなかでも大原の自然を借景とした庭園は必見です。大原の歴史や先人たちの想いを馳せながら庭園を眺めると、心が穏やかになるのがわかるでしょう。

里の風情がただよう苔庭を歩く「三千院門跡」

伝教大師・最澄が比叡山に建立した草庵が前身の天台宗寺院。境内には江戸初期作庭の「有清園(ゆうせいえん)」、「聚碧園(しゅうへきえん)」、平成に作庭された「慈眼(じげん)の庭」と計3つの庭園があり、春は山桜とシャクナゲ、初夏はアジサイ、秋は紅葉、冬は雪景色と、季節によりさまざまな表情を見せてくれます。

有清園

「有清園」は、一面が苔に覆われており、杉や檜が立ち並ぶ姿と滝の水が流れ込む池を臨むことができる池泉回遊式庭園です。苔の中に穏やかな笑顔がかわいいお地蔵さまが置かれています。

聚碧園

「聚碧園」は、江戸初期の茶人・金森宗和による修築と伝えられています。清らかな池、一面に広がる苔、手入れされた木々が美しく、隣接する書院の縁側で、庭を眺めながら抹茶をいただけます。

境内を奥に進むと、観音堂のそばに枯山水の石庭「慈眼の庭」が広がります。阿弥陀三尊や菩薩を象徴した石が配置され、境内の北を流れる「律川(りつせん)」から引き入れた川水が流れています。

▽三千院門跡
京都市左京区大原来迎院町540
075-744-2531
9:00~17:00
8:30~17:00(11月)
9:00~16:30(12月~2月)

平家物語ゆかりの庭で静かな時間を過ごせる「寂光院」

594(推古2)年、聖徳太子の建立と伝わる天台宗の寺院「寂光院」。

寂光院本堂

平家滅亡後、平清盛の娘・建礼門院(けんれいもんいん)が出家して平家一門と安徳天皇を弔い、静かな晩年を送りました。平家物語「大原御幸(おおはらごこう)」には、建礼門院と後白河法皇が対面する場面が描かれています。法皇は、青葉がまじった桜を眺めて「池水に 汀(みぎわ)の桜散り敷きて 波の花こそ盛りなりけれ」と和歌を詠みました。

庭園

池泉庭園「汀の池」には遅咲きの「汀の桜」とご神木「姫小松」があり、往時を偲ぶことができます。本堂の右手には、江戸初期の作庭とされる回遊式「四方正面の庭」があります。植栽や、背後の山から引かれた水によって三段の滝が表現された「心字池」は、本堂の東側や書院の北側など、四方のどこから見ても正面となるように配置されています。
また、京都御所で行われた昭和天皇の即位の御大典の際に用いられた部材によって造られた茶室「孤雲」へと至る道にも池泉庭園があります。

▽寂光院
京都市左京区大原草生町676
075-744-3341
9:00〜17:00(12〜2月は〜16:30)
https://www.jakkoin.jp/

柱を額縁に見立てて鑑賞する「額縁庭園」が美しい「宝泉院」

平安末期ごろ、天台声明の根本道場「勝林院」の住職の坊としてはじまった天台宗の寺院「宝泉院」。客殿の柱と鴨居をフレームに見立てて鑑賞する庭園「盤桓園(ばんかんえん)」は、額縁庭園と呼ばれています。

盤桓園(ばんかんえん)

参拝者にふるまわれる抹茶と茶菓子をいただきながら、近江富士をかたどった樹齢約700年の五葉松、竹林、大原の里山と奥行きのある庭を鑑賞できます。盤桓は「立ち去りがたい」という意味があり、まさに絵画のような景色はいつまでも眺めていたい美しさです。

入口の横には江戸時代に作庭された「鶴亀庭園」があります。池が鶴、築山が亀、さざんかが蓬莱山を表しており、樹齢300年の沙羅双樹(さらそうじゅ)がたたずんでいます。客殿からは格子越しに鑑賞することができます。

鶴亀庭園

特に美しいのは桜と新緑(4月~5月上旬)と、紅葉(11~12月上旬)のシーズンです。

▽宝泉院
京都市左京区大原勝林院町187
075-744-2409
9:00〜17:00(受付終了は16:30)

※この記事の情報は、2023年1月時点のものです。